「快便」ってなに?快便にまつわるよくある誤解とおすすめの快便習慣を紹介

更新:2021年12月22日
この記事の監修者
烏山 司 先生(消化器内科医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター)

消化器内科医として勤務する傍ら、スポーツドクター資格も取得。一般の方からアスリートまで、専門である消化器を中心に内科領域全般の診療を行っている。

「快便ってなに?」と疑問に思ったことはありませんか?今回は快便に関する以下の5つの疑問に専門家が回答します。

  1. 快便とは毎日便が出ることですか?
  2. 便の量は多ければ多いほどよいのですか?
  3. 便の色って関係ありますか?
  4. 食物繊維を大量に食べれば快便になりますか?
  5. 便がツルンと出るときとそうでないときがあります。この違いって重要ですか?

さらに、快便になるために日常生活に取り入れるべき食事や運動などおすすめの快便習慣を紹介していきます。

Q. 快便とは毎日便が出ることですか?

答え:誤解です。

「毎日便が出る=快便」とは必ずしも言い切れません。

「快便」について考える前に、「便秘」とはどういう状況を指すのか見てみましょう。

慢性便秘症診療ガイドラインによると「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」を便秘として定義しています[1]。「◯日間、便が出ない」というような条件はなく、「十分な量の便が出ない」「快適に排便できない」状態が便秘です。

つまり、「快便=便秘ではない」と考えた時、毎日便が出ているかどうかはポイントではありません。排便をしてもスッキリしない、いきまないと排便出来ないと感じている時は快便ではないのです。

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逆に、2、3日に1回の排便だとしても自然にスッキリ排便され、日々の生活の中で残便感などの便に対して悩みがない場合は快便といえます。

Q. 便の量は多ければ多いほどよいのですか?

答え:誤解です。

先ほどの便秘の定義から考えると、「本来排便されるべき量が排便されている場合」を快便と言うことができます。したがって、便の量が多ければ良い、少ないから悪いというわけではありません。

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便の量は平均して1日100~200gほどで、食べ物によって変化してきます。一般には、植物性の食物を日ごろからよく食べる人は排便量は多く、肉類を多く食べる人は排便量は少ない傾向があると言われています [2]便の量にかかわらず、すっきり排便できていると感じているということが大切です。

Q. 便の色って関係ありますか?

答え:関係あります。

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便の色は体に何らかの異常をきたしている場合にいち早く教えてくれる健康指標のバロメーターにもなり、便の色と健康状態は以下の関係があると考えられています [2]

  • 正常:黄褐色
  • 食べ過ぎ・飲みすぎ:茶~茶褐色
  • 脂肪便:白色
  • 上部消化管出血:黒色
  • 下部消化管出血:赤色

定期的に便の色を確認して、いつもと変わりがないかチェックしましょう。

また、薬を服用したり、色の濃い食品や飲料を摂取した時には、有効成分や添加剤の影響で便の色が変化することがあります。この場合は一時的な色の変化で健康状態に異常があるわけではないため、現在薬を服用中で便の色がいつもと違うと感じた場合は医師や薬剤師に相談してみましょう。

Q. 食物繊維を大量に食べれば快便になりますか?

答え:誤解です。

たしかに、食物繊維を摂取することは便に含まれる水分量を増やすことや便のかさを高くすることに繋がり、排便を促すことが期待できます。

一方、小腸の中で腸内細菌が過剰に増殖している状態(SIBO; Small Intestinal Bacterial Overgrowth)の方は注意が必要です。食物繊維をはじめとするおなかの調子を整えるために積極的に摂取するような食品(「FODMAP食」と呼ばれています)は逆に体調を悪化させてしまうおそれがあります [3]

したがって、食物繊維は適切な量を摂取することが大切です。厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、女性18 g以上、男性21 g以上(ともに18~64歳の場合)を食物繊維の1日の摂取目標量として定めています。

また、可食部100gあたり、ごぼうに5.7 g、モロヘイヤに5.9 g、しいたけに3.5 gの食物繊維が含まれています。

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快便のために食物繊維を摂ってみようと考えている方は、この数値を基準に食物繊維の摂取量を決めてみてはいかがでしょうか。

Q. 便がツルンと出るときとそうでないときがあります。この違いって重要ですか?

答え:重要です。

便が自然にツルンと排便され、スッキリと感じる事が出来れば快便でしょう。一方で、いきまないと排便できない、残便感がある時は便秘傾向と言えます。

ここでは、さらにブリストルスケールを用いて解説していきます。ブリストルスケールとは、便の状態をを7種類のカテゴリーに分類したもので、医学的に便の状態を診断する時に使われる指標です [4]。ブリストルスケールでは一番理想的な便のかたさ、形はタイプ4として、タイプ1~3を便秘(傾向)、タイプ5~7を下痢(傾向)としています。

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タイプ1~3のような水分量が少ない便は、かたくなってしまって排便しづらい状態です。このタイプの便だと、ツルンと出にくい時があります。このことから、便がツルンと出ないときは、便が固くなってしまって便秘傾向を示している可能性があります。後ほど紹介する快便習慣を身につけ、スッキリと感じる排便を目指しましょう。

Q. つまり「快便」ってなんですか?

答え:快便とは自然とすっきり、ツルンと排便することです。

基本的には排便の回数や排便量と快便に深い関係はなく、お腹の張りや痛み、残便感などがなくて排便に対する悩みがない状態を快便だと言えます。

ここまで快便に対する疑問にお答えしましたが、「快便」とはどういう状態なのかを理解していただけたでしょうか?

次は、快便生活を送るために守っていただきたいポイントを紹介します。

おすすめの快便習慣!守って欲しい3つのポイント

日本人の便秘の有症率は一般人口の2~28%だと言われています [5]。ここでは、便秘にならずに快便を続けるためのポイントを3つ紹介します。

ポイント1:「朝食を抜かないこと」が一番大事

ある研究では、食事を抜く回数が多い人ほど排便回数が減少した、もしくは自分は便秘傾向だと思っている人が多いことが分かっています [6]。また、排便について悩みがない人は、1日の生活の中で起床時から朝食直後に排便すると答えた人の割合が多いとの報告もあります。

気持ちのよい排便を促す食生活として、まずは1日3食しっかりと摂取することが基本です。また、朝食を食べることにより、腸が刺激され排便に繋がることが分かっています [7]

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食物繊維を多く摂るなど食事の内容に気をつかうだけでなく、特に朝食を意識した食事のタイミングにも注意して快便になるように心がけていきましょう。

ポイント2:腹筋運動と全身運動を取り入れよう

排便時には便を押し出すために腹筋使います。また、腹筋を上手く使うことができない、または腹筋が低下しているために排便困難な状態へ陥ってしまうこともあります。

腹筋運動を習慣的に行っていなかった方はできる範囲で腹筋運動をはじめてみましょう。同時に、腸管運動を促進すると考えられているウォーキングなどの有酸素運動も取り入れてみてはいかがでしょうか [8]

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ポイント3:睡眠は質が重要

交感神経と副交感神経の2種類ある自律神経はどちらが優位な状態かによって体の様々な機能を調節しています。腸管の働きが活発になるのは「副交感神経」が優位に働いている時です。また、腸の働きには「体内時計(サーカディアンリズム)」が存在していて、規則正しい生活を送ることが健康的な腸内環境を整えるためには大切と言えます。

規則正しい体内時計(サーカディアンリズム)を保つためには睡眠が特に重要です。日本人女性を対象とした睡眠と便通状態に関する疫学調査から、睡眠の質、つまり夜更かしなどせずに毎日決まった時間に就寝・起床する習慣がある人は不規則な睡眠をとっている人と比べて便通の状態が良い傾向があることが分かっています [9]

十分な睡眠時間を確保することはもちろんですが、毎日決まった時間に寝る習慣を身につけることを心がけましょう。

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3つの快便ポイントを心がけて、スッキリ排便しよう

「快便」についての疑問は解消できたでしょうか?今回は快便について解説し、快便習慣を身につけるための生活習慣を3つ紹介しました。

  • 朝食を抜かない
  • 運動を取り入れる
  • 睡眠を大切にする

以上の3つのポイントを意識して、スッキリとした快便習慣を手に入れましょう。

参考文献

  1. 慢性便秘症診療ガイドライン2017: 書籍/南江堂
  2. 6.便でわかる体の調子 | 薬事情報センター
  3. Small Intestinal Bacterial Overgrowth in Patients With Cirrhosis
  4. Detection of pseudodiarrhoea by simple clinical assessment of intestinal transit rate
  5. I.慢性便秘症の診断と治療
  6. 女子学生の排便傾向と食習慣との関連
  7. Circadian coupling between pancreatic secretion and intestinal motility in humans
  8. Ⅴ.慢性便秘症に対する食事療法,運動療法,理学療法
  9. 東京圏の成人女性を対象とした便通状態と睡眠健康に関する疫学的調査
この記事の監修者
烏山 司 先生(消化器内科医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター)

消化器内科医として勤務する傍ら、スポーツドクター資格も取得。一般の方からアスリートまで、専門である消化器を中心に内科領域全般の診療を行っている。

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